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2018-03-18

書は人を表すのか?

昨年3月18日、最期を家で迎えたいという父の希望を叶えるため、24時間往診専門医と訪問看護師さんたちに支えられて、父は家で息を引き取った。父の葬儀を終えて、5月5日の四十九日までに「南無阿弥陀仏」の掛け軸を用意するため、葬儀後、すぐにとりかかった。
父が息を引き取るのに立ち会うまでの日々は、極限まで自分を追い詰める日々でもあった。その後のさまざまな手続きをしながら、「四十九日までは」と張りつめていたように思う。そんな気持ちを抱えながらこの字を書いた。なぜか「強くかかなくては・・」と思っていたように思う。自分の寂しさや悲しさを隠すように・・
そして出来上がったこの軸を見たとき「なんて寂しい・・」と愕然とした。あれだけ頑張ったのに、頑張ったつもりだったのに・・どうしてこんなに寂しい字なんだろう!と涙が出た。
書は人を表すのか?と聞かれることがあるけれど、私にはわからない。ただ、書いた人の気持ちが書に表れるということだけは確かだと思う。この掛け軸は、今日までずっと掛けていた。一周忌を迎えて「あの時は確かに悲しくて心細かった」という自分をやっと認めることができるようになった。
明日は別の軸を掛けよう。とりあえず父が生きていたころのものをかけ、また私が書きたいと思ったものを書いて飾ろう。父の大好きなこの家の床の間に・・
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