「雪持ちの竹」
和柄コンサルタントの成願義夫先生に、私に合う柄を選んでもらった。
「雪持ちの竹」とは、笹に雪が降り積もり、その重さで、まっすぐである竹が
撓んでいる様子を表したものだ。
私が自己紹介をし、先生が私に質問をしながら選んでくださったのだ。
後日、その時のことを先生からお聞きした。
「お話を聞きながらあなたの気持ちにシンクロしたような不思議な感覚でした。
この柄だと思って、説明を始めたら私自身が、あなたのつらかった思いなどが思い浮かんで、
涙が出てきてしまいました。あまりないことですが、不思議な時間でしたね。」
「雪持ちの竹」の意味は、その姿は雪の重さに折れそうになるんだけれど、
限界になると笹の上から雪が滑り落ちる。
そしてまた元のまっすぐな竹の姿となり、春になればまた伸びるとのこと。
「だからあなたは、辛いことがあっても、困難を乗り越えてきたのでしょう。
雪は必ず落ちますからね!」
先生の優しさが、私のいつもは抑え込んでいるような感情が一気にあふれ、
ズーム中なのに、くしゃくしゃの顔で涙が止まらなくなった。
10人鑑定の5番目だったが、自分が終わるとズームのビデオをオフにしてしばらく
泣きじゃくっていた。結局、最後にやっとカメラをオンにできたのだが・・・
後日、先生のお話を聞きながら、私は4年前に亡くなった父のことを考えていた。
誤嚥性肺炎を繰り返し、熱が出ては入院し、下がれば退院を繰り返していた父は
「家で死にたい」といった。訪問治療に切り替えることができ、もう入院しなくてもいい、
ずっと家にいることができると伝えた日、「お前のおかげで、わしの人生は幸せだった」と
言ってくれました。
聴覚をほぼ失って5年。父の介護をしてきましたが、悲しみが襲ってきたのは
亡くなって四十九日が過ぎたころからです。
車の運転をしていて突然涙が溢れたり、布団に入って子どものように泣いてみたり。
(私はこんなに、父のことを好きだったのだろうか?)と。
成願先生の口から語られる言葉に、まるで父に言われているような心持になっていました。
書家の活動を応援してくれていた父の、今の私への励ましに思えたのです。
先生との共有した時間は、言葉ではうまく説明できませんが、良いご縁をいただいたことに
感謝しております。
今後も和柄についても学ばせていただき、9月の個展につなげていきたいと思います。