toggle
2016-09-23

「嬉しい贈り物」~月餅

日本にある中国領事館に通訳として勤める「彼女」から北京からわざわざ取り寄せたという月餅が届いた。

「彼女」との出会いは五年前・・・

私が言葉も分からず無謀にも上海に行き、慌てて中国語を学ぶために孔子学院を訪れたときだった。一年間、中国から交流学生として一人で福山に来た北京大学院生。孔子学院で中国語を教えながら日本文化や日本語を学ぶのが目的だった。

私は「彼女」の初めての生徒で、私にとっては初めての中国語の先生だった。

日本語は難しい。いくら中国の外国語学院で学んでも一人暮らしをするには二十代前半の彼女には孤独な日々だった。

それでも一生懸命日本語を覚えようとする「彼女」常にメモ帳を持ち歩き、分からない言葉や習慣があるとメモをとっていた。

勢いで中国に通うことになった私は、彼女から中国のことを学び、私は「彼女」に日本語と日本の文化を教えた。

日本の正月、孔子学院は休みになる。2月に帰国する「彼女」を、大晦日に我が家に泊めた。日本の正月を知って欲しかったからだ。

「彼女」を一目見て母は「まあべっぴんさんじゃね」と言った。彼女には全く意味が分からなかったようだ(^_^;)

我が家に居る間、私は備後弁の通訳になった!

裏山の小さな神社に初詣にも行った。丁度、尖閣問題もあり御神酒の入った人からは、露骨に中国人への不満も聞いた。偏見ではあるが現実でもある。

一泊二日、お雑煮を食べた「彼女」は手作り餃子を食べさせたい!と材料を買ってきていた。

水餃子は両親には珍しかったが、本音は慣れた焼き餃子の方が美味しいと思っていた。でも「彼女」の心遣いが嬉しかった。

その「彼女」が帰国して外務省に入り、昨年、通訳として日本の領事館にやってきた。一年に一度くらいメールのやりとりをしていたが、先日電話がかかってきた。

「北京で一番有名な月餅を取り寄せたので送りますから住所を教えてください」と。

日頃、菓子類はほとんど食べない私だが、一切れ食べてみた。たぶん私が食べた月餅の中では一番美味しいものだった。

出会って五年。ご縁に感謝!

関連記事・作品