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2018-04-12

本物に出会う

昨年3月18日、父を家で看取った。桜はみることが難しいだろうと、桜盆栽を買ったが、花を見ることはできなかった。  
「私はこんなに父を好きだっただろうか?」と自分でも驚くほど、父の最期をみとるまでの日々がこの一年頭から離れなかった。  
一年桜だという盆栽に小さいけれど今年も花が咲いた。最近インスタグラムで知り合った「真右衛門窯」のぐい飲みを買った。一目ぼれの衝動買いだったが、手のひらに収まる感覚も、深みのある色合いも素敵だった。  
父と二人でささやかな花見をした。毎晩晩酌を欠かしたことのない父だった。私は父に似ているのだろう。肝硬変になっても一人で飲んで寝る習慣は変わらない。飲めるうちは大丈夫だと、長く病気と付き合ってると自己診断できるようになる。  
父は家で最期を迎えることを望み、私は私のできる限りのことをしたつもりだが人の最期をみとるということは、家族には惨いことでもある。ただ家で看取ることを決めて父に伝えたとき「お前のおかげでわしの人生は幸せだった」といってくれた。その言葉だけが寂しさを癒してくれた。  
人は生き様を選べるが、死にざまを選べる人がどれほどいるだろうか?最期を迎える日まで、意味のある毎日を過ごしたいと思いながら「字を書く、絵を描く」ことを心掛けるようになって、それまでの私の作品と少し変わってきたようにも思える。  
喜んでいただけるものを作りたいという思いが伝わる作品に出合えると嬉しいものだ。私もそうありたいと父に伝えた・・・
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