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著書

本の特徴

この本の良いところは楷書の基本の筆使いをわかりやすく説明しているところです。
初めて筆を持つ小学生の教科書を基本にしているからですが、今までのテキストには見られない二つの特徴があります。

一つは、筆の中心となる筆先の動きが赤線で示してあること。日本の書道教育はお手本を写して添削してもらうことが多く、筆の運び方の基本にはあまり時間をかけることができていない現状です。本書で基本の筆の動きを学び、組み合わせることで自分でどんな文字でも書けるようになります。

もう一つは、文字全体のバランスを学びやすいよう、米字枠を使用していることです。紙を折って縦の中心を意識することはよくありますが、縦横斜めの線があることで長さや角度がわかりやすくなっています。説明の上部は中国の教科書の直訳ですが、下部に「琇香のワンポイントアドバイス」があります。これは私が実際に学んで難しいと感じたことを書いています。同じように難しいと感じている方のお役に立てれば幸いです。

後半には練習帳も付けています。直接書いても裏写りしません。コピーして半紙の下敷きとして練習していただくこともできます。文字のバランスをとることができれば、筆以外の筆記用具でもバランスの良い美しい文字を書くことができるようになります。

書家になったきっかけ

私は2012年まで33年間県立学校の教員をしていました。2000年にB型肝炎を発症し休職中、何か有効に時間を使えないものか?とカルチャースクールのチラシを見て「書道」を始めました。

そんな私が退職時、たまたま福山大学福山孔子学院で「水墨画」講座を受けました。たった二日間でしたが講師の上海師範大学張信教授に「よければ私のところに来て勉強しませんか?」と誘っていただきました。10年間東京にいらっしゃった流暢な日本語を話される先生の人柄に惹かれたこと。来月から無職になること。それらが重なり即決してしまいました。

翌月の上海行をその場で決め、初めて海外一人旅。上海空港に降り立った時、先生が30分遅れて来れれるまでの心細さは今も忘れられません。当たり前のことですが、周囲は中国語だらけで、電話番号を聞いてはいたものの電話の掛け方もわからなかったのです。

毎回先生に通訳をさせるわけにはいかないと、帰国後すぐ福山大学福山孔子学院の中国語講座に受講を申し込みましたが、今思えばずいぶん無謀なことをしたものだと・・・

上海には一年に7~8回くらいの頻度で3年通いました。2泊3日、2時間×4回マンツーマンの指導を受けました。3年が経ち先生の課題をクリアすることができ「上海市大学書法教育協会」師範をいただくことができました。しかしまだその時点では出版など考えてはいませんでした。

本ができるまでの経緯

どんなに多くの人が、パソコンやプリンターを使うようになっても「文字を書くこと」がなくなることはなりません。

「せめてのし袋と自分の名前や住所を筆できれいに書きたい」
「今さら書道教室に通うのは・・・」
そんな声をたくさん聞きました。

そんな人たちに、わかりやすく一人でも練習できるようなテキストがあればよいのに・・と思っていました。

師範をいただいたとき、偶然張信教授が編集された中国の義務教育で使用される教科書を見せていただき驚きました。小学校3年生から始まる書道教育の教科書には、私が何時間もかけて古典の写し書き(臨書)をしてやっと覚えたことが、とても分かりやすく書いてありました。

「先生、この教科書をください」というと「差し上げますが、あなたはこれを使って日本人向けの本を作ればいいでしょう?」と言われました。

本など作ったことのない私には無理だと思われたのですが、当時私を応援してくださっていた正文社印刷所会長が全面的協力を申し出てくださいました。

しかし、内容の編集は教科書を参考にすれば済むのですが、著作権の問題は中国と日本では大きく契約方法や考え方が違っていました。上海の出版社へ張信教授と正文社会長とともに赴き、張信教授の通訳とご協力を得て、双方初めての形だという契約書を交わすことができました。

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皆さんのご協力をいただけたことに心より感謝しております。

※この本は上海の書道教科書を参考にしています。原作者である上海師範大学教授張信先生のご協力と、上海科技教育出版社よりその権利を授与されたものです。よって許可なしに転載・複製することを禁じます。

今後の展開

多くの方たちのご協力を得て形になったこの本を、できるだけ多くの人に活用していただきたいと思っています。そのため、ネット販売も検討中ですが、暫くはお問い合わせいただいた方にお送りしたいと思います。また、美しい文字を書きたいと思っている方たちが集まった所に説明に出向きたいと思っています。また企業や団体でのセミナーにも講師としてのご要望があればうかがいます。

その他、この本の活用の検討・希望がありましたら「お問い合わせ」よりご連絡ください。m(_ _)m